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ここは、スイスのローザンヌのミハイロフ一家が幸せに暮らしている街です。 一人娘のミーナは、
この8月16日に8歳のお誕生日を迎えます。
ミーナは賢い子、通っている女学園で一番の成績となりました。
そのご褒美として、ダーヴィドおじさんは、彼女がずっと聴きたいと思っていた、天使の歌声の“ ウ
ィーン少年合唱団”のチケットを3枚 贈ってきてくれました。
コンサートの日は、まさに ! 8月16日 ミーナのお誕生日です。
オーストリア ウィーンへの到着は、8月10日でした。
その後、家族でゆっくりと観光して、お誕生日にコンサートに出掛ける。という、予定だったのですが
これがとんでもない、ミーナの冒険旅行 と、なってしまったのでした。
8月10日の夕方、ミハイロフ一家はホテルでゆっくりと、くつろいでいます。
お父さんのアレクセイは甘い、甘い、父親。何でもいう事を聞いてくれます。
「この六日間は、ミーナの為の旅だよ。何処でも、行きたい所を言いなさい。」
「シューベルトが “菩提樹 “を 作った ウィーンの森、 ハイドンの家、 ザッハトルテも食べた
い。」
「よし ! 早めに夕食をとって、 ウィーンの森、 ハイドンの家、 最後がザッハトルテだ。 ユリウ
ス、用意をしてくれ。」
妻、ユリウスはアレクセイを深く愛しています。 夫の言いなりです。
そして、ミーナは、そんな両親が大好き ! 言い付けを守る、良い子です。
だから、ミハイロフ一家はとても幸せな家族なのでした。
最初に訪れたウィーンの森、ウィーンを愛したシューベルト。
ここでシューベルトは美しい曲を作曲したのね。
今も、変わらなく菩提樹は森の中にありました。
そして、別れ際ミーナは静かに、歌 『 菩提樹 』を口ずさみます。
♪ 泉に沿いて 繁る菩提樹
慕いて 行きては 美し 夢見つ
幹には 彫りぬ 愛の言葉
うれし悲しに 訪いし そのかげ ♪ (訳:近藤朔風)
次に訪れた、ハイドンの家。
賑やかな街中にありました。
“交響曲の父” と、呼ばれたハイドン、彼がおじいさんになった頃、ウィーンの街はフランスの攻
撃をうけました。 おじいさんのハイドンは、街が燃えている風景を見ながら、心を痛ませました。
“ 人は、何故、争うのか ? 音楽で何か力になれないか ? “ ハイドンはそう思いながら、作曲を
続けました。
そんなハイドンの元へ、フランスの士官が訪ねてきます。彼はハイドンの事を敬愛していました。 そ
の士官はハイドンのメロディーに合わせ歌い始めました。
ハイドンは涙を流して喜びました。
ハイドンが亡くなる、数日前の出来事 !
ミーナはこのお話が大好きです。
ハイドンの家はそんな彼の平和を愛する気持ちがたっぷり詰まった、そんな感じのする家でした。
ハイドンの家をゆっくりと、見学したミハイロフ一家三人、ちょうどお腹が空いてきました。 最後の
目的は、ザッハトルテ。
アレクセイは、「なんか、ぴったりだな。歩き疲れて、なんか甘いものが食べたいと思っていた。」
どこが良いか、ウィーンの街を散策します。
お父さんとお母さんは、いつもしっかりと手を繋いで歩きます。 ミーナはそんな二人の邪魔をしない
よう、二人の後を歩くようにしていました。
お洒落な町並みを歩いて行くと、ふと小さなポスターにミーナの目は止まりました。 美容室の貼り紙
『綺麗な髪の女の子、モデルになりませんか ? 』 じっと、見つめていると、中から美容師さんが出
てきました。
「やってみたいなぁ〜って、思っているの ? 」
「私にも出来ますか ? 」
「もちろん。綺麗なカールのロング、ブロンドの色も素敵。」
「明日、来てもいいですか ? 」
「いいわよ。でも、ご両親の許可がいるわ。」
ずっと、遠くの方で、二人は娘を見失い捜しています。
「お父さ〜ん、こっち !」
アレクセイもユリウスもミーナの、モデル話に大賛成。書類にサインをしました。
“ 娘、ミーナ ミハイロワが、貴店の
モデルになることを、許可します。
アレクセイ ミハイロフ 8月10日 ”
三人は、美容師のお姉さんに美味しいザッハトルテのお店を紹介してもらいました。『カフェ ザッハ
ー』 アレクセイ一家が泊まっている、『ホテル ザッハー』の中のお店でした。
アレクセイは、「はりこんで、あのホテルに決めて良かった ! さぁ、行こうぜ。」
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