再会・6

    お父さんが帰って来たので、マリアおばさんから頂いた包みを開けました。        
  中から出てきたのは、ドレス!
「お母さん、広げてみるね」
シンプルな形のドレス…。
「見て!ブラウスとスカートが外れるデザインよ」

スカートはオーバースカート、ギャザーたっぷり。でも、裾の広がりを抑えたベルライ
ン。色は灰色に紺色が混じった濃いグレー。
ブラウスはフリルはないけれど、襟元と袖口のレースが素敵。色は白に近い淡い、淡い、
お母さんの瞳と同じ緑がかった、ホワイトグリーン。

「素敵!早く、着て見せて〜♪」
何故か、ためらい、困った表情のお母さん…。
お父さんにそっと、尋ねてみると、
そういえば、ユリウスはミーナがお腹にいた時以外、パンツを穿いて、男の格好をしていた
な」
 「えぇ?何それ!それじゃあ、私にお父さんが二人になってしまう。イヤ〜!」     
  「自分の事を、ぼく、とも呼んでいたぞ」
「それは、絶体にやめて。ダメダメ!絶対にダメ〜」
「まだ、あるぞ、男子校に通っていた。お父さん、初対面で、パンチで殴り倒されてしまっ
た」
「やめて!もう、聞きたくない」
お父さんの大きな笑い声が、病室に広がります。
でも、私の頭の中は ? ? ?  







再会・6

   そして、退院の日、お母さんはドレスを着て、髪を片方の耳元に軽く束ねました。          
お父さんは一言、「…似合うぜ…。」
早朝、辺りはまだ仄暗いです。でも、きっと今日は晴れ!お天気も私達の喜びを祝福してく
れると、思うわ!
私の前をお父さんとお母さんが歩いて行く。
何て、静かで清々しいの…。
それに比べ、私の生まれた国ロシアは、お父さんいつも深い溜め息をつき、「革命は終った
はずなのになぁ。」と、悲しそう。
権力争い、ゆがみあい、喧嘩が絶えませんでした。
でも、これからは、大丈夫、大丈夫と、自分に言い聞かせながら、二人の後を歩いて行きま
した。

ベルリンから、レーゲンスブルク迄、列車の距離は、かなりありました。
マリアおばさん、遠い道のりを、お見舞い、ありがとう。
朝一番に出て、アーレンスマイヤ家に着いた時、時計の針はもうすぐ、お昼を指そうと、し
ていました。
アーレンスマイヤのお屋敷はとても立派、おばさんの「一緒に住まない?」という提案を、お 
父さんは「スタートは三人で。」と断り、小さなアパートを借り住む事になっています。
お母さんは病み上がりで、かなり疲れたみたい、ベッドを借り、休んでいます。       
私とお父さんは居間に通されました。
お父さんは私の隣で、とても緊張しています。
おばさんとおじさんが居間に戻って来ました。
「ユリウス、熱っぽいわね。今夜はこちらで休ませましょう。」
「お姉さん、申し訳ありません。自己紹介もしないまま、何もかも、甘えてしまい。」
ダーヴィトおじさんは静かな声で話し始めました。
「クラウス、いや、アレクセイ ミハイロフ、ロシア人だね。
君の事は調べさせて貰った。全て、分かっているよ。
君達は、ロシアで夫婦になったのだね。
君は妻の全てを知り、そして受け入れる事が出来るかい?」
「え?ユリウスの全て?」
お父さんは思いました。
「そういえば、俺はユリウスの何も知らないと。」...。