お父さんは今日、ダーヴィドおじさんと、コンサートに出掛けています。                
「ベルリンへ来て、彼の第9を聴かずに帰るなんて、考えられない!」大興奮でした。
ドイツに来て、お父さんの夢が二つも叶えられるの!私まで嬉しくなってしまう。     
一つは、お母さんに会えた事。
もう一つは、お父さんの尊敬する、ヴィルヘルム ・フルトヴェングラー指揮する、ベルリン 
フィルハーモニー管弦楽団の演奏が聴けること。
ダーヴィドおじさんが苦労して、チケットを買ってくださいました。
今夜はその後、朝まで飲み明かすそうです。
二人はとても仲の良い親友、何でも言い合えるお友達です。

    次の朝、お父さんは夢心地で帰って来ました。                                         
「いやぁー、素晴らしかった! 彼は、俺とほとんど年が変わらないんだ。彼の人生は音楽一 
筋…。魂を揺り動かす音……」
そして、私達に聞こえないくらい小さな声で「あの指揮で、ヴァイオリンを演奏したかった」
そして、もっと、つぶやくように、「いや、演奏したい!」と……。           
  私に聞こえたそのささやき声は、お母さんにも届いたみたい、だって、お母さん、お父さん
の革命により痛めてしまった指を悲しそうに見詰めていたから……。